Brownie ブラウニー

スコットランド高地地方とイングランド全域で見られ、人家に住みつく妖精で、ドイツでは「コボルトKobold」、デンマークでは「ニスNis」、ノルウェーでは「ニッセ」、スコットランド高地では「ボダッハ」、アイルランドでは「プーカ」、ウェールズでは「ブーカ」、マン島では「フィノデリー」、イングランドでは「ホブゴブリン」と呼ばれる。イングランド北部の「シルキー(Silky)も同じ種族とされる。
デンマークではニス(ブラウニー)の住む家には幸福が訪れると信じられている。丁重に扱われている間は感謝のしるしとしてよく働くが、誰かが彼をいらいらさせたり怒らせたりすると必ずその人に仕返しをするという。また、あまのじゃくな性質も合わせ持ち、散らかっている物は片づけるが片づいてる物を散らかすとも言われている。
そして、もし彼らにお礼をする場合には注意が必要である。さりげなく、ささやかに、部屋の隅に置いておき、無くなってもそれが彼らの仕業とは全く気づかぬ顔をしていなければいけないのだ。過ぎた贈り物は彼らを驚かせ、あるいは怒らせる原因となるからである。例えばコップ一杯のミルクは喜ぶが、着る物を贈ると二度と姿を現さなくなるという。
ノルウェーの「ニッセ」も同じくいたずら好きだが、農家の納屋などに住み着き、家畜の世話をしてくれたりもする。クリスマス・イブには彼らにお礼として、粥を捧げる習慣があるが、これを怠ると、ニッセが家畜や作物に悪さをして、その家族に不幸をもたらすとされる。また、ニッセが年をとると、ユーレニッセすなわちサンタクロースになるのだともいわれている。

イギリス民話「レイジン・ホールのブラウニー」トマス・カイトリー
ダンフリースシャーのレイジン・ホールに1人のブラウニーが住んでいた。彼が主張するにはもう三百年間もそこにいるという。さて、このブラウニーは家の主人が代わると、その時1度だけ新しい主人に自分の姿を見せる習慣があった。
彼に大変好かれていたある主人が死んだとき、ブラウニーもひどく悲しんでしばらく食べ物にも手を付けなかったが、後継ぎがよその土地から戻ってくると、ブラウニーは彼に敬意を表すため姿を見せた。ところが、新しい主人はブラウニーのみすぼらしい姿に気を悪くして、召使いに命じて肉と飲み物、新しい衣服を一そろい持ってこさせた。するとブラウニーは、「カー、カッテー、カー、レイジン・ホールの幸福は、私と一緒にボズベック・ホールへと行く」と声高き泣き叫びながら立ち去った。それから何年も経たないうちにレイジン・ホールは廃墟となり、代わってボズベック・ホールはブラウニーの世話を受けて繁栄した。

イギリス民話「ダルスウィントンのブラウニー」トマス・カイトリー
ダルスウィントンの領主マクスウェルの屋敷に1人のブラウニーが住んでいた。このブラウニーは領主の娘と仲良しで、彼女の最も信頼できる友であった。娘が結婚してからもいつも彼女の力になっていた。
しかし、ちょうど宗教改革が盛んな頃だったため、ある日熱心な聖職者がブラウニーにも洗礼を授けようとこの屋敷にやってきた。夜になって納屋で仕事を始めたブラウニーに聖職者が聖水を投げかけると、何も知らないブラウニーはおびえて悲鳴をあげると、そのまま永久に姿を消してしまった。

スコットランド(高地)民話「ストラスペイのブラウニー」トマス・カイトリー
男女2人のブラウニーがストラスペイの旧家タロフゴームの家族と一緒に住んでいた。女のブラウニー(モーグ・ヴァルチ)は女中たちを厳しく監督し女主人に告げ口をしたので女中たちから恐がられていたが、男のブラウニー(ブラウニー・クロッド)はあまり利口ではなくお人好しだったのでいつも召使いに騙されていた。しかし、ある折り彼は召使いにお返しをする機会に恵まれた。
ブラウニー・クロッドは、召使い2人と冬の脱穀を彼らに代わって全部するかわりに、彼が気に入ってる古いコートと古い帽子を貰う約束を交わした。彼は約束通り働きはじめ、2人の召使い達はわらの上にのんびり横になって見物しているだけでよかった。しかし、約束がまだ満了しないうちに、彼らは納屋の中にブラウニーにやるコートと帽子を置いてしまった。すかさずそれを取ったブラウニーは「ブラウニーがコートと帽子を手に入れたら、もうそれ以上は働かない」と言ってさっさと仕事をやめてしまった。

デンマーク民話「ニスと雌馬」トマス・カイトリー
ティルプの町に住むある百姓が、とても美しい白い雌馬を飼っていた。ニスがこの馬をたいそう可愛がっているのを家の人も知っていたので、白い雌馬はまるで家宝のように父から子へ受け継がれて長年にわたり大事にされてきた。
けれども、その百姓の家が人手に渡ると、その雌馬は隣の貧しい百姓の所に売られてしまった。すると幸運はニスと共にその家の新しい持ち主を離れ、雌馬のいる貧しい百姓のところへと移ってしまった。5日とたたないうちに馬を買ったほうの家は状況がぐんぐん良くなり、反対に馬を売った家では収入が減っていった。
ところが、ある日雌馬を手に入れた百姓は、ニスの姿を一目見たくてたまらなくなり、真夜中にこっそり自分の納屋を覗いてみた。ちょうどニスが隣人の納屋からコムギのいっぱい入った袋を背負って帰ってきたところだったが、物陰から覗いている男の姿を見てしまった。ニスはいつものように馬の世話をし終えると男に別れを告げた。
その日以来、2人の隣人の状況は対等になった。今はどちらも幸運を手放し、暮らしていくのがやっとという生活である。

スカンジナビア民話「ニスの引っ越し」トマス・カイトリー
ニスから逃げ出すのは大変難しいと言われるが、ある男はニスがあまりにも悪さをするため、ニスを置き去りにしてこっそり家から立ち去ろうと決心をした。
荷物を馬車にすっかり積み込み、いよいよ男が家とニスに別れを告げようと後ろを振り向くと、置いてきた筈のニスが馬車に載せた樽の中に座っていた。男は自分の努力が無駄になったのを見てひどくがっかりした。知らない土地で同じニスと暮らすよりは今のままの方がいいと考えた男は、、再び荷物を家の中に運び入れた。

スカンジナビア民話「ニスの後悔」J・M・ティーレ編
ユトランドのある家に1人のニスが住み着いていた。家の人は幾つかのパンのかけらとバターを木の鉢に入れて、彼のために台所に置いておくのが習わしになっていた。
彼がある晩いつものとおり木鉢を引き寄せ食事をしようとしたところバターが見あたらなかった。女中がいれ忘れたのだと考えたニスはかんかんに怒り、牛小屋へ行って一番良い牝牛を殺してしまった。しかし、お腹は空いていたのでパンだけでも食べようと台所に戻ってパンのかけらを少しつまんだところ、その中にバターが挟んであるのに気が付いた。ニスは自分の勘違いをひどく悔やんで、その埋め合わせとして死んだ牛の脇に金の詰まったひつを置いた。あくる朝それを見つけた家族は、そのひつのお陰でとても裕福になった。

ドイツ民話「ハインツェルメルヘン」トマス・カイトリー
ケルンには今から百年ほど前までハインツェルメルヘンという精が住み着いていた。彼らは小さな裸の小人で、パンを焼いたり洗濯をしたり、その他いろいろな家事をやってくれていた。その頃この町にはたくさんのパン屋があったが、どこのパン屋も雇い人を1人も置かなかった。いつも小人たちが、店に必要なだけのパンを夜の間に作っておいてくれたからである。
さて、この町に1人の腕の良い仕立屋が住んでいたが、小人たちはこの男が大変気に入ったらしく、せっせと彼の仕事を手伝った。そして、彼の家族が増えると家族の仕事も片づけた。
ところが、好奇心の強い仕立屋の妻は、ハインツェルメルヘンの姿が見たくてとうとう我慢が出来なくなり、ある晩彼女は階段全体に豆をまき散らしておいた。彼らが階段を下りるとき慌てて姿を現すだろうと考えたのだった。しかし、この計画は失敗に終わり、それ以来ハインツェルメルヘンはこの町に1人もいなくなってしまった。町の人々の耳には、彼らがケルンの町を去る時に奏した音楽だけが残された。

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