Review レビューボクの初体験
ボクの初体験

ページ数:503
掲載号:週刊マーガレット 1975年 39号〜1976年 14号

本ページはネタバレを含みます。作品を未見の方はご注意下さい。

アマチュア映画祭の出品者に「にくいあんちきしょう」の滝昌人と弓月先生。

女性化したみちるの英太郎が色目を使う通行人が弓月先生。

キャラクター

宮田英太郎
純情だが超面食いのハンサム男。冴木みちると相思相愛。
英太郎の人浦春奈=英太郎の脳を持った春奈
英太郎の脳が春奈の体に移植され人浦春奈として復活。
冴木みちる
英太郎のガールフレンド。英太郎をフッて美女連盟を結成。
みちるの宮田英太郎=みちるの脳を持った英太郎
みちるの脳が英太郎の体に移植され宮田英太郎として復活。
人浦狂児
名物キャラクター。妻の蘇生のために脳移植を研究する医学界の鬼才。
人浦春奈
人浦博士の妻。17才のときに脳腫瘍で死亡。
湯川央司
神奈川県警の刑事。英語教師として学校に潜入。
米長邦子
英太郎をフッて美女連盟に加入した女の子。
中園まゆみ
英太郎をフッて美女連盟に加入した女の子。
永井
キスの研究に余念がない学年一の秀才。
真樹村みずえ
日赤産院の美人先生。
真樹村先生
名物キャラクター。真樹村みずえの母で女医。

| 1 | 2 |

ストーリー

さてある日、英太郎と春奈が人浦邸へ帰ると博士はクリスマスの準備。
クリスマスは博士と春奈が恋に落ちた記念すべき日と知ると、二人は博士からその馴れ初めを聞きだそうとしますが、博士は照れて話そうとしません。
そんなとき博士の日記「わが愛の記録」を偶然発見し、二人は強引に読み始めます。

——— 人浦狂児40才のある日、彼は失恋した15才の少女・白坂春奈が雑誌で心の痛手をなぐさめてくれる文通相手を探しているのを見つけます。
春奈に同情した狂児は年を18才と偽って昔の写真を同封しなぐさめの手紙を書きます。
そして返ってきた返事に同封されていた写真のあまりの美少女ぶりに彼はびっくり。すっかり夢中になってしまった狂児は何度も手紙を書き、春奈も彼を「おにいさま」と慕うようになります。

しかしある日春奈から「会ってお話がしたいので山下公園でお待ちしています」と手紙が来ます。
困惑した狂児は公園でいつまでも待ち続ける春奈を遠くから見守ります。そして一向に帰ろうとしない彼女にチンピラが絡むのを見て、彼は果敢に彼女を助け出します。

狂児はそれ以来、名前を偽って春奈とつき合うようになり、次第に「やさしいおじさん」と慕われるようになります。
そしてクリスマスの日、狂児は春奈を二人きりのパーティーに誘います。
しかしパーティーの当日、春奈は昔のボーイフレンドに声をかけられつい彼のパーティーへついて行ってしまいます。そして夜10時を回る頃、彼女はあわてて狂児の家に駆けつけますが、そこには豪華なクリスマスツリーと彼女へのプレゼントの山。そして疲れてソファで眠る狂児の姿が。

狂児のそばには春奈と交した手紙が散らばり、彼女は彼が人浦狂児だと知ります。
そして春奈は目を腫らして眠る狂児にひざまくらをし、彼の頬にやさしくキスをします ———




博士と春奈の感動的な純愛物語を知った二人は涙し、英太郎の春奈はドレスを着て「今日一日は本当の春奈よ」と博士に迫ります。
そして春奈に濃厚なキスをした博士は喜びのあまりシャンデリアにぶら下がってアクロバット。見事に落下して頭を強打。そのまま心臓が止まってしまいます。

このままでは一生元の体に戻れないと思った二人は博士を甦生させようと心臓に電気ショックを連発しますが、一向に目を覚まさない博士を前に二人は絶望のどん底へ。
しかしそのとき、電圧が最大の10万ボルトまで上がってしまい、博士はフランケンシュタインのごとく復活します。




そこへ突然また湯川先生が現れます。
彼は自作映画が日本アマチュア映画祭に入選したからと言い、翌日の本選の審査会に人浦博士、英太郎、春奈の三人を招待します。
三人はあのドラキュラ映画が入選したのかと驚きますが、実は先生が別に撮っておいた映画。

そして三人は発表会に出向きますが、会場は神奈川県警幹部も列席する物々しい雰囲気。
そんな中、湯川先生は自分は英語教師ではなく県警の刑事で、冴木みちる誘拐事件の調査のために学校へ潜入し捜査を進めてきたことを打ち明けます。
そして人浦博士と春奈の手に手錠をかけ、二人が誘拐犯人であることの証拠として映画を上映。
映画は「恐怖の脳移植〜湯川央司の事件簿より」。
映画はみちるがトラックに轢かれた場面から始まり、博士の脳移植手術や脳を入れ替えられて異常な行動をする春奈たちの様子が映し出され、会場は騒然とします。

しかし映画が終わると会場は大爆笑の渦。審査員はこぞって最高点をつけ、映画は見事にグランプリに。
湯川先生は必死でフィクションではないと主張しますが、県警幹部すらまるで信用せず、先生はそのまま解雇されてしまいます。




そして時はお正月。人浦邸に学校の友だちを招いて新年会。
そこでお酒をたっぷり飲んでしまった英太郎の春奈はそのままふたたび女性化した上、さらにハレンチ化し始め、百人一首の最中に手を触れた永井にキスをしてしまいます。
そして永井を「あなたはキスが下手ねえ」と馬鹿にします。
みちるの英太郎は春奈を必死に戻そうと顔を引っ叩きますが一向に効かず、やっと戻ったときには春奈はそのままのびてしまいます。
一方、春奈に馬鹿にされた永井はその日からキスの猛勉強に取り組むことに。

さてだんだん女性化の激しくなる英太郎の春奈は早く元の体に戻してくれるよう博士に嘆願し、博士は部屋へ閉じこもり悩みます。

そこへ現れたのは春奈の幻。
彼女は 「私はあなたの心の中に生き続けるから」と諭し、博士は一週間後に手術に踏み切る決心をします。

さて新年も明け学校は授業再開。県警をクビになり学校もやめることになった湯川先生は最後の授業を始めます。
しかし英語の教科書を開いた先生に生徒たちは猛ブーイング。
調子に乗った先生はふたたびマッチ棒クイズを繰り広げ、秀才・永井と一騎打ちとなります。
そして最後に勝負にわざと負けた永井は涙を浮かべ「先生やめないで」と訴え、他の生徒たちも教壇へ駆け寄ります。
そして感動した先生が「わかった。ぼくは教師をやめない」と宣言すると、永井は先生に濃厚なキス攻撃。




さていよいよ二人の脳を元の体に戻す手術の日が近づきます。
しかしある朝英太郎の春奈は吐き気を催し、みちるの英太郎と一緒に病院へ行きますが、そこで下った診断は何と「妊娠3ケ月」。
春奈は人浦博士の子どもと考え、みちるの英太郎は英太郎が春奈になった後に博士に襲われたのかと思い同情しますが、春奈は身に覚えがなく疑問は増すばかり。
しかし妊娠がバレたら博士は春奈を元に戻さないと考えた二人はこのことを秘密にします。

そしてまずみちるの手術の日。
突然の停電トラブルで右手を怪我してしまった人浦博士は春奈に代わりに手術をするよう要求します。
しかしカエルの解剖すら失敗する英太郎の春奈のあまりの不器用さに手術は大混乱。
ついには博士が左手で手術し何とか無事成功に終わります。
しかし無事元の体に戻ったみちるは目が覚めるなり、博士に突然「春奈は妊娠している」と告白。そして自分はさっさと家へ帰ってしまいます。

そして予想通り英太郎の春奈の手術は中止。春奈はついに出産に向けて妊婦生活をスタートする羽目になります。




さて翌日みちるは無事学校へ復帰。そして英太郎の春奈の秘密を学校中にバラしてしまいます。
そうとは知らない春奈が登校すると学校は異様なまでの静けさ。
そしてその時大歓声とともに屋上から「祝・英太郎女性化記念および御懐妊記念」の垂れ幕が。
みちるの残酷な裏切り行為にショックを受けた英太郎の春奈はふたたび「また死んでやる」と学校を飛び出し、かつて身を投げた断崖へ走ります。しかしそのときお腹の中で赤ちゃんが動き、春奈は崖っぷちでストップ。
彼を追いかけて来たみちるが勢い余って海へ落ちてしまいます。

意識を失っていたみちるが目を覚ますと、そこはふたたび人浦邸。
崖から落ちたみちるの脳はふたたび英太郎の体に入れられてしまったのです。

そして春奈のお腹は目に見えて大きくなり、あるとき病院の母親学級に参加することになります。
そこで彼は超美人の医師・真樹村みずえ先生に出会いメロメロ。彼は毎日学級に通いたいと言いますが、人浦先生の手配で代わりに女医が家に来ることに。
春奈はがっかりしますが、その名前が真樹村先生と聞いてふたたび狂喜乱舞。
しかし真樹村先生はみずえ先生の母で、娘とは似ても似つかぬパワフルジャンボおばあさん。
そしてその日から真樹村おばあさんのダイナミッックな指導のもと、春奈は母親になるための猛特訓を開始します。




そして英太郎の春奈もついに妊娠9ケ月。ついに陣痛が彼女を襲います。
彼は救急車で運ばれ一旦は陣痛は収まったものの、病院には学校の生徒たちやカメラを担いだ湯川先生まで押しかけ大混乱。
彼は頭に血が上りふたたび陣痛に襲われついに分娩室へ。

そして英太郎の春奈は無事女の子を出産。しかし彼はみちるの英太郎のことが判らないほど女性化が進んでしまいます。
ショックを受けたみちるの英太郎はこのまま男になって春奈と結婚する、と言い出します。
そして英太郎の面影すら見えず、記憶がとんで状況が判らなくなっている春奈は人浦博士を「こんなおじいさんが自分の旦那であるはずがない」とまで言い出します。
そして本当に男になる決心をしたみちるは・・・。


| 1 | 2 |

エリート狂走曲」と並ぶ傑作のひとつ。
弓月先生の得意技のひとつは美少女の容赦ない顔面崩しですが、この作品での春奈の顔はその素顔がわからなくなってしまうほどの凄まじいもの。その表情に象徴されるように展開は超ハイテンションで、他に類を見ません。
しかしストーリーも緻密で心をつかむ見どころも多数用意されています。人浦博士と春奈の馴れ初めが明らかにされる部分や、春奈を失いたくない博士を彼女の幻が諭す部分などは本当に涙を誘います。

これより前に発表された「笑って許して」も男女の脳を入れ替えるというストーリーで本作品の原点となるもの。
また厳密には続編とは言えませんが、人浦博士に加え、社会人になった英太郎とみちるも登場する「手術しちゃうから!」も本作品の関連作となります。

作品中に掲載当時の週刊マーガレットでマッチ棒クイズとともに公募した英文和訳の問題が登場します。

  1. Full I care cowards to become miss note.
  2. Oh my san near her gay girl.
  3. Make so.

このうち、2、3は読者からの投稿ですが、1は弓月先生ご自身の出題のようです。

湯川先生は自作の告発映画のせいで県警を解雇されてふてくされますが、その代わりにアマチュア映画祭のグランプリを受賞し1千万円を獲得。つまりあの若さで退職金が1千万円で英語教師の職も安泰と思えば別に不満はないのでは、と思いました。


All images copyrighted by 弓月光 YUZUKI Pro corp. and 集英社